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繙 蟠 録 2010年10月後半

2010/10/28 “多く早く”の情報「革命」に抗して文化大革命を!

中国革命は文体革命だった。文体といい文風ともいうがスタイル,風である。五四白話文運動で句読点(中国語では標点符号という)を発明し,分かりやすい文体を広めた。わざと難しい言い回しをする知識人を鼻つまみにし,阿Qたち(流動的下層貧民)は武器になる活きた文字と言葉を取り戻していった。

 毛沢東は,国内「難民」としてもっとも卑しまれ蔑まれた遊民を「兵」として訓練し,社会でもっとも尊敬される人間類型として組織し,また人民公社をつくって食えるようにした。

それは,文字と言葉を奪われた阿Qたちが文字と言葉を取り戻す革命だった。三大規律八項注意を歌って言葉を覚え,生活スタイルを変えていった。識字運動であり,訴苦運動という翻身革命だった。

 毛沢東が,近代西欧の個人主義やアナキズム,マルクス主義から出発して「大同」を主張し,社会の最下層の遊民,外村人,工人階級を教育,組織し,強力な解放軍をつくりあげた底流には,墨家の思想があった。墨子は「防禦」から出発する弱者のための軍事論を創り上げた思想者である。永く続いた科挙体制下で抑えられてきた劣等生,ハンパ者の生きる思想として墨侠精神は営々と受け継がれていった。

 1949年,中華人民共和国成立。しかし革命を政権奪取に切り縮めた輩が特権階級になっていく。“多く早く”という欧米の情報革命の風が吹き,人々は革命の原点を忘れた。農村での教育運動を都市へと文化大革命を起こした。何億冊も刷られた『毛主席語録』を繰り返し読み,読み変え,繰り返し書き,書き変え,繰り返し組み,組み変える文体革命だった。私はこれを日本文化大革命の号砲として受け取り,下放を始めた。世界中の青少年に影響を及ぼしたのである。

 今なお問題は,情報処理革命か,それとも文化大革命か,だ。“多く早く”の強迫観念に囚われた情報処理革命は,情報過多と外部メモリ依存によって実ところ“鈍く狭く”なった。目を拡張した結果,目が弱っちまったという訳だ。耳を拡張した結果,聴き取る力が萎え,闇夜を生き抜く五感は衰弱した。モノを視る目,感じる心,考える力を奪い返すためには情報遮断も必要ではないか。

 引きこもりがいけない,外に出ろ,という。しかし,情報の溢れた「外」で溺れる前に,時に情報を断って引きこもって自身を見つめ,自身の五感を確かめる時間と空間を持つことはとても大切なことだと思う。(M)

2010/10/25 家辺勝文さんの近刊『活字とアルファベット』ご案内!

家辺勝文さんの期待の近刊『活字とアルファベット 技術から見た日本語表記の姿』法政大学出版局刊がいよいよ10月29日書店配本の予定です。予約するには,オンライン書店ビーケーワン http://bit.ly/ddfJEU 版元ドットコム http://bit.ly/bZG1mh でできます。

※ 上記画像をクリックするとチラシPDFデータを表示,印字,ダウンロードできます!(M)

2010/10/18 トークイベント「映像とタイポグラフィの周辺」の予約受付を開始!

 ※ 画像をクリックするとチラシPDFデータを表示,印字,ダウンロードできます! →ジュンク堂書店池袋本店トークセッション情報

【ジュンク堂書店池袋本店JUNKU 連続トークセッション
映像とタイポグラフィの周辺 ~『市川崑のタイポグラフィ』刊行を祝して~

対談:小谷充さん(新著『市川崑のタイポグラフィ』,島根大学教員)×鈴木一誌さん(『d/SIGN』責任編集,ブックデザイナー)
企画進行:前田年昭(編集・校正・組版者)

酷暑の今夏出た小谷さんの『市川崑のタイポグラフィ』(水曜社)が熱い。映画「犬神家の一族」の巨大明朝体の来歴を丹念にたどった本書の謎解きの面白さは,映画好きや文字好きだけでなく本好きの人びとの心を惹きつけた。各紙誌に書評が載り,早くも重版である。他方,映画批評でも活躍のブックデザイナー鈴木一誌さんの『d/SIGN』は今秋18号を重ね,10年目になろうとしている。タイトルバックやモーションタイポグラフィなど映像表現におけるタイポグラフィは,ブックデザインと何が異なり何が共通なのか。メディア史の激動のいま,映像とタイポグラフィの現状と問題点はどこにあるのか。今後の“夢”をふくめて自在に語りあう。

  • 日時 2010年12月9日(木曜日)午後7時から
  • 会場 ジュンク堂書店池袋本店4階カフェにて
  • 定員 40名(お電話又はご来店にてお申し込み先着順)
  • 入場料 1000円(ドリンク付)
  • 受付 お電話又はご来店(1Fサービスカウンター)にて先着順に受付。お問い合わせは,池袋本店TEL03-5956-6111

【略歴紹介】
小谷充(こたにみつる) 1968年岡山生まれ。島根大学大学院教育学研究科准教授。筑波大学大学院芸術研究科修了後,デザイン制作会社に勤務し,企業広報誌や女性誌のレイアウトを経験。のちにDTP部門の立ち上げスタッフとして参画。以降,コンピュータ初心者向け雑誌のデザインを中心に出版物のフォーマット設計を担当。NEC社製コンピュータ解説書「活用ブック」のデザインほか,「第6回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2000」,「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2003」への出品など。

鈴木一誌(すずきひとし) 1950年東京生まれ。グラフィックデザイナー。東京造形大学を経て杉浦康平のアシスタントを12年間つとめ,85年に独立。〈装幀〉ばかりではなく,書物全体の設計=ブックデザインの立場からページに関わりたいと思っている。2001年よりデザイン批評誌『d/SIGN』を戸田ツトムとともに責任編集。映画や写真の批評も手がける。著書に『画面の誕生』(みすず書房),『ページと力 手わざ,そしてデジタル・デザイン』『重力のデザイン 本から写真へ』(以上,青土社),共著に『知恵蔵裁判全記録』(太田出版),『映画の呼吸 澤井信一郎の監督作法』(ワイズ出版)ほか。

前田年昭(まえだとしあき) 1954年大阪生まれ。編集・校正・組版者。思想誌『悍』編集人。】(M)


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